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2022/6/13 9:00

断熱等級5・6・7が新設されます

23年ぶりに断熱等級が新設

室内環境の快適性や光熱費に大きく影響する断熱性能。
現在の家づくりにおいて、断熱性能は欠かせない性能値として重要視されていますが、このたび23年ぶりに新たな断熱等級が設定されることになりました。
2022年4月より断熱等級5が新設され、2022年10月より断熱等級6・7が新設される予定です。
とりわけ、断熱等級6・7は、これまでの断熱等級4と比べてはるかに高いレベルの断熱性能を求められるようになります。


(※H28年基準とH11年基準は、求められる断熱性能がどちらも同じ断熱等級4のため、1999年以来の断熱等級の新設となります。)

なお、断熱等級5の断熱基準は、経済産業省が定めたZEH基準(=UA値0.6)と同等の基準。
断熱等級6・7の断熱基準は、民間団体が定めたHEAT20 G2グレード(=UA値0.46)、G3グレード(=UA値0.26)を追認する形で設定されるようです。
(※一部地域では断熱等級6・7とHEAT20 G2・G3グレードの断熱基準が異なります。)


今までの最高等級が最低基準に

現在、このニュースは住宅業界で大きく取り上げられています。
その理由は、断熱等級4と比べて、断熱等級6は約2倍、断熱等級7は約3倍程度の断熱性能にしなければならず、クリアするべき断熱基準が厳しくなったためでしょう。

では、なぜ断熱等級の基準が、ここまで飛躍的に引き上げられたのかというと、以下の3つの理由が考えられます。
・断熱等級の新設自体が23年ぶりだったこと
・国が断熱基準の改定に消極的でいた間に、民間団体が先行して断熱基準を普及させたこと
・脱炭素政策などの影響で諸外国並みの断熱基準を導入せざるを得なくなったこと

なお、2025年には断熱等級4の「適合義務化」が予定されています。
「適合義務化」により、断熱等級4未満の新築住宅は2025年以降、建築不可になることから、今までの最高等級であった断熱等級4は、法律上クリアしなければならない最低限の断熱基準となります。


目指すべき基準は断熱等級6

これまでであれば、どんなローコストメーカーであっても「最高等級の断熱性能」と謳うことができました。
しかし、10月以降、最高等級の断熱性能と表記できるのは、いくつかのハウスメーカーの最上位グレードだけとなります。
こういった住宅政策の変化に伴い、各ハウスメーカーでは断熱等級7をクリアした新商品を開発中との話も聞こえてきますが、国の政策や基準が変わったからといって、求めるべき断熱基準が変わるわけではありません。
まずは目指すべき基準として断熱等級6をクリアして、資金に余裕のある方は、より高い断熱性能を視野に入れるのがいいでしょう。
なお、渡辺工務店では2021年度の新築住宅の平均UA値は0.377で、断熱等級6をすべての住宅でクリアしています。


UA値だけで住まいの快適性は測れない

UA値は、住宅の断熱性能を表す指標として分かりやすく、各会社ごとの断熱性能を比較することが可能です。
今回、断熱等級が新設されたことで、新築住宅の高断熱化が促され、快適な住まいが増えることが期待されます。
その一方で、UA値を過度に重要視して、数値を追い求めることが正義であるかのように考える風潮が広がっています。
もちろん、一定水準を満たさなければ快適な温熱環境を実現するのは難しいものの、UA値の数値だけで住まいが快適になるわけではありません。

UA値の計算は、断熱材の種類や厚み、窓の仕様などによって決まり、これらは設計段階で計算される数値でしかなく、現場の施工精度などは考慮されません。
また、UA値はあくまで、温熱環境を構成する一要素でしかなく、気密性能、換気・空調計画、日射取得・日射遮蔽などの要素は計算に含まれません。
断熱の設計方法についても、断熱層をどの位置にするか、断熱材の厚みを部位によって追加するべきか、通気層や気流止めをどう納めるかなど、検討すべき内容は多岐にわたります。

今後、ローコストメーカーなどでも、断熱等級6・7の住宅を宣伝する会社が出てくると思われます。
住宅会社を選ぶ際に、UA値などの数値を比較しただけでは、快適な住まいになるか判断するのは難しいでしょう。
検討中の住宅会社には、断熱の知識、現場の施工精度、設計上の工夫などを確認して、自分たちの家づくりを任せることができるかどうか、しっかりと見極めることが大切です。

参考記事