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2022/8/22 11:00

UA値とはなにか?

断熱性能の意味を考える

断熱性能を表すUA値は、新築住宅を検討中に一度は聞いたことのある性能値だと思いますが、その数値の意味を理解している人はあまり多くないのではないでしょうか。
UA値とは、そもそもどういう意味か、数値をどのように捉えたらいいのか、どの程度までこだわるべきなのか、今回は知ってるようで知らないUA値について解説します。




UA値=外皮平均熱貫流率

UA値とは、外皮平均熱貫流率のことです。
「外皮平均熱貫流率」と言われても、言葉の意味を理解しにくいかと思いますが、3つの単語に分解すると、それぞれの意味は以下のとおりになります。

・外皮
家の外周部、外気と接している部分のこと

・平均
アベレージ、UA値のAはアベレージを指す

・熱貫流率
熱の伝わりやすさの指標、U値で表す

まとめると「家の外周部から伝わる熱量を平均したもの」というのがUA値の意味になります。
UA値が低くなると、室内と外気の間で伝わる熱量が少なくなるため、室内温度が外気温に影響されにくい、断熱性能の良い住宅にすることができます。
ここからは、UA値や断熱性能についてより詳しく説明する前に、まずは「外皮」と「熱貫流率」について解説していきます。


外皮の意味

外皮とは家の外周部のことで、外気と接している箇所を指します。
具体的には、壁・窓・玄関ドア・屋根(または天井)・基礎(または床)などの部分です。
室内温度と外気温の両方に接して、内部と外部を熱的に分ける断熱ラインのことを外皮と呼びます。



外皮面積は、言葉の通り外皮の面積を合計したもので、住宅が外気と接する部分の表面積というイメージが分かりやすいかもしれません。
そのため、断熱材を施工する位置が、屋根か天井かなどによって、外皮面積の大きさが変動することになります。


熱貫流率「U値」について

熱貫流率「U値」とは、温度差1℃・面積1㎡の時に、何ワット(W)の熱を伝えるかを表した指標です。
数値が小さければ小さいほど、移動する熱量が少ないので断熱性能が高いことを示します。



熱貫流率は、壁や窓など各部位の断熱仕様によって数値が決まります。
UA値を下げるための最も基本的な方法は、各部位の熱貫流率「U値」を下げることです。
UA値にこだわる方は、壁や窓などの「U値」を良いグレードにすることを最初に検討してみましょう。


UA値の計算方法

ここまで、外皮と熱貫流率についての説明で、それぞれの言葉の意味が理解いただけたと思います。
ここからは、UA値の計算方法を解説していきます。UA値を計算するには、各部位の外皮面積と熱貫流率の数値から求めることができます。
具体的には、壁や窓などの各部位の熱貫流率「U値」を、部位ごとの外皮面積の比率に応じて加重平均することでUA値が計算できます。




細かな計算方法については、理解が難しいところもあるかもしれません。
しかし、このUA値の計算結果から、各部位の熱貫流率「U値」を下げることのほかに、U値の良くない窓の面積が小さい場合でも、UA値が良くなるということが分かると思います。
また、窓面積を小さくした場合だけUA値が改善するわけではなく、屋根や基礎と比べて、窓と壁を含む外壁面の面積が小さくなる場合も、UA値の数値が良くなる傾向にあります。
そのため、同じ床面積の2階建てと平屋を比較した場合に、平屋のほうが屋根と基礎の面積が大きく、外壁面の面積が小さくなるため、同じ断熱仕様であってもUA値は良い数値を出すことが可能です。


UA値の意味とその限界

このように、UA値の計算方法を知ることで、どうすればUA値をより良くできるのか分かるようになります。
しかし、UA値の数値を改善することで、実際の暮らしに良い影響があるといえるのでしょうか。
ここでは、2つの例からUA値の意味とその限界をお伝えします。

例1 UA値が低ければ光熱費は安くなるか

天井断熱と屋根断熱を比べたときに、屋根断熱のほうが壁や屋根の外皮面積が大きくなります。
そのため、間取りや窓面積が同じだった場合、壁や屋根の外皮面積が大きい屋根断熱のほうがUA値は低くなります。
一方で、エアコンなどで空調する必要のある空気の体積(=気積)も屋根断熱のほうが大きくなります。
つまり、同じ間取り、同じ窓の大きさの家で比較すると、屋根断熱のほうが断熱性能の高い部位の面積が増えるためUA値は良くなりますが、室内の気積も増えるため光熱費が多くかかるようになります。

このように、必ずしもUA値が低ければ、光熱費が安くなるわけではありません。
あくまでUA値は各部位の熱貫流率の平均でしかないため、窓を減らすか壁を増やせばUA値を良くすることは可能ですが、住宅の外皮面積や気積が増えてしまうと、余計なコストがかかることになります。
なお、屋根断熱にするのであれば、「小屋裏部屋を作りたい」「勾配天井にしたい」などの希望がある場合に採用するのがいいでしょう。

例2 UA値が低ければ室内の温熱環境は快適になるか

住宅の外皮面積の大きさは、一番大きいのが「壁」、次に「屋根・基礎」、「窓」が最も小さいという順番が一般的です。
そのため、住宅会社の仕入れコストなどにもよりますが、同じ費用でUA値を良くするために最も効果的なのは、壁の断熱性能を高めることで、もし窓の断熱性能を高めてUA値を良くする場合は、相当な高性能化とそれなりの費用が必要になります。
しかし、壁の断熱性能が高く、窓の断熱性能が低い住宅では、窓付近だけ外気温の影響を大きく受けることになり、室内に温度差が生じて不快感を覚えることになります。
なので、室内の温熱環境を改善するためには、コストがかかったとしても、断熱の弱点になっている窓の性能を優先的に上げたほうが、温度のムラを抑えた快適な空間を実現しやすく、満足度が高くなります。

また、断熱の話になると壁と窓ばかりに注目が集まることが多いのですが、屋根や基礎の断熱性能も重要で、これらの断熱性能をおろそかにしてしまうと、夏の熱ごもりや、冬の底冷えが生じる原因となります。
例えば、屋根面は直射日光の影響を受けるため、主に外気温の影響を受ける外壁と比べて、より大きな温度差にさらされており、屋根から伝わる熱を遮るため、屋根断熱に求められる断熱性能は壁の断熱の2倍程度と言われています(天井断熱の場合も同様)。
基礎断熱は、ここ最近、断熱性能の計算方法が見直されており、従来考えられていたよりも断熱性能が良くないことが分かってきたため、新しい知識を取り入れていない住宅会社では断熱性能が不足していることがあります。
このように、部位ごとに検討すべき点があり、理解したうえで断熱仕様を決めなければ、UA値は良い数値になっても、温度差が大きく快適とは言えない住宅になってしまいます。


ここで挙げた2つの例から分かることは、UA値は低ければ低いほど良いものではありますが、UA値にこだわるあまり温熱環境の改善につながらない工夫を行うのは避けるべきということです。
断熱性能をより良くしたいのであれば、各部位の断熱仕様をバランスよく高めることが最も大切であり、住宅の形や断熱位置などによって変わるUA値は計算の結果でしかないため、0.01の違いに一喜一憂する必要はありません。
UA値が重要な性能値であることは間違いないものの、それだけで温熱環境の快適性が語れるほど単純なものではなく、断熱性能を重要視するのであれば、UA値に加えて各部位の断熱仕様を確認するところから始めるべきでしょう。


UA値の数値にどこまでこだわるべきか

ここまでの説明で、UA値だけで選んだ家づくりでは、快適な住まいになるとは限らないことが理解いただけたと思います。
しかし、住宅の断熱性能を高めたいと考えた場合に、各部位の断熱仕様を公開している会社は多くなく、結局UA値で比較検討しなければならないのが現実だと思います。
そのため、UA値の数値をどこまでこだわればいいのか、目指すべき基準はあるのか、住宅会社を検討する際のポイントをお伝えします。

結論から言うと、一般的な断熱材や施工方法でUA値を計算した場合、条件にもよりますがUA値0.4程度までは下げることが可能なので、断熱等級6=UA値0.46以下の断熱性能を満たした住宅会社を候補とするのがいいでしょう。
この水準であれば、断熱性能をバランスよく高めることで達成可能な数値のため、断熱性能にこだわった家づくりをしている会社なら問題なく対応できるはずです。
そのうえで、各部位の断熱仕様や、現場の施工精度、通気層や気流止めなどの断熱施工の納まりについて、しっかりと考えられているかを確認しておきましょう。
また、断熱の知識だけでなく、気密・防湿についても、どのように検討しているか答えられることが、依頼先に求めるべき最低限のレベルだと考えます。


まとめ

近年では、UA値競争とでもいうべき状況が見受けられますが、室内の温熱環境を快適にするという目的以上に、UA値の数値を下げるという手段を重要視した、UA値至上主義のような考え方が広まっているように感じます。
また、住宅会社が広告で打ち出しているUA値は、かなり有利な条件で計算しているものが多く、各社の断熱性能を比較しているランキングなどは、あまり参考にならないケースもあります。
UA値については、一定の水準以上を求めるべきではあるものの、数値の0.01を競い合う必要はありません。
それ以上に大切なのは、断熱・気密・防湿などの知識をしっかりと備えていることで、これらの要素を考慮しなければ、長期的に性能を維持することが難しく、住宅の耐久性にも影響します。

また、UA値は、内外の温度差に対してどの程度の熱を伝えるかを表した数値であり、室内の温熱環境に及ぼす影響の一部でしかありません。
例えば、冬の場合には、換気・漏気による熱の損失や、日射熱による熱の取得によって、室温が変化することをUA値では考慮していません。
UA値はあくまでひとつの指標でしかなく、気密性能、換気・空調計画、日射取得・日射遮蔽など、ほかの要素を検討しなければ、快適な温熱環境は実現できないということです。

UA値だけにこだわることの問題点を指摘してきましたが、家づくりにおいて断熱性能が重要であることに変わりはありません。
温熱環境に優れた冬暖かく夏涼しい家にするという目的を達成するために、断熱性能は欠かせない要素のひとつだからです。
しかし、UA値に加えて、ほかの要素も考慮に入れる必要があることも、理解いただけたと思います。
家づくりを成功させるためには、断熱性能だけにとどまらず、より高いレベルの設計技術をもった住宅会社に依頼することが最も大切だといえるでしょう。

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