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2023/5/22 17:00

高断熱化・太陽光パネル設置の前にやるべきこと

住宅の高断熱化や太陽光パネルの設置は、家庭の省エネ性の向上やエネルギーの自給自足に向けた重要な取り組みとして、注目を集めています。
そのため、新築住宅を建てる際に、高断熱住宅や太陽光パネルの設置を要望される方も多いのではないでしょうか。
しかし、こういった住宅を建てる前に、考慮すべき重要なポイントがあります。
それは、住宅の高断熱化や太陽光パネルの設置に伴う、住宅の重量化と、耐震性能への影響という問題です。

住宅を高断熱化するにあたっては、より高性能な断熱材や窓サッシを採用する必要があり、それらを採用することで住宅の重量が増えることになるのです。
ここでは、具体的な事例によって、どのように住宅の重量化が生じるのかを説明します。

まず、住宅に使用される断熱材についてです。
従来は一般的なグラスウール10k 50mmが使用されていましたが、高断熱仕様にするためには、高性能グラスウール16k 105mmを使用することが多いでしょう。
これにより、断熱性能が向上しますが、その分重量も3倍以上になります。

また、窓サッシについては、現在の高断熱住宅では樹脂サッシを使用することが増えています。
樹脂サッシはアルミサッシと比べて剛性が劣るため、樹脂サッシを使用する場合は、アルミと比べて樹脂をより厚く使うことで、強度を高めており、その分重量が増加します。
ガラスも以前は単板(シングルガラス)が主流でしたが、現在は複層(ペアガラス)が標準となっており、重量が倍増しています。

そして、太陽光パネルの設置は、屋根面の重量を増やすことになります。
屋根面の重量が増えると、住宅全体の重心が高くなり、地震の際に揺れが大きくなります。
そのため、現在の構造計算では、太陽光パネルの設置による屋根の重さを考慮して耐震性能を評価する必要があります。


このように、住宅は高断熱化・省エネ化を進めるとともに重量も増加し、地震が発生した際に、より大きな力が住宅の構造体へかかるようになっています。
では、高断熱化などによる重量化の影響は、耐震性の評価にどのように反映されるのでしょうか。
住宅の耐震性能を確かめる構造計算においては、住宅の固定荷重を入力する必要があり、建材の重量化に伴う耐震性能への影響を考慮したうえで、安全性を確認しています。
また、今後は、壁量計算と呼ばれる簡易的な計算方法においても、高断熱化に伴う重量増を見越した壁量の計算見直しが進んでいるようです。
2025年には4号特例も廃止され、新築住宅の耐震性能にはより厳しい基準が求められることが予想されます。

しかし、ここ1~2年の間の新築工事においては、構造計算をせず、基準が見直される前の壁量計算のままで高断熱化や太陽光パネルの設置を行うことが可能となっています。
構造計算を行わないことで、将来において、耐震基準を満たさない住宅になってしまうリスクがあるのです。

耐震性能の向上は住宅の安全性を確保するために不可欠です。高断熱化や太陽光パネルの設置と同様に、耐震性能も重要な要素です。将来の地震や自然災害に対する安全性を確保するためには、構造計算を適切に行うことが欠かせません。
構造計算は、建物の耐震性能を評価するための重要な手法で、建物の構造や材料の強度、地盤の特性などを考慮し、地震時にどれだけの力や揺れに耐えることができるかを評価します。
構造計算によって得られる結果を基に、必要な補強や対策を行うことで、耐震性能を向上させることができます。

現在でも住宅の構造計算ができない工務店は多く存在します。
そのような会社が壁量計算をもとに耐震性を説明しているとしたら、高断熱化や太陽光パネルの設置を考える前に、構造計算を行ってもらうように要望するべきでしょう。
構造計算は専門の設計事務所に外注することが可能なので、費用が掛かっても確実に行うべきです。
将来にわたって安心して住むことができる住宅を建てるために、しっかりと構造計算を行ったうえで高性能住宅を建てるようにしましょう。