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2023/5/22 18:00

樹脂サッシにアルミスペーサーが標準?

最近の新築住宅では、サッシの素材として「樹脂サッシ」が人気を集めています。
サッシとは、窓ガラスの周りにある窓枠のことで、かつては「アルミサッシ」が主流でしたが、現在では「樹脂アルミ複合サッシ」や「樹脂サッシ」など多く使用されています。

まず、サッシに使用される素材の特徴について説明します。
「アルミサッシ」は、戦後から長い間、住宅用サッシとして使用されてきました。
その耐久性や加工の容易さ、コストの安さから新築住宅のほとんどで採用されるほど高いシェアを誇っていました。
しかし、断熱性能が極めて低く、窓際の寒さや窓が結露する原因となっています。

「アルミ樹脂複合サッシ」は、アルミサッシの断熱性能の低さを改善したサッシとして開発され、近年まではほとんどのハウスメーカーで、アルミ樹脂複合サッシが使用されるほど主流のサッシでした。
アルミ樹脂複合サッシは、外部をアルミで作ることで、雨による腐食や太陽光による紫外線劣化の影響を抑えつつ、内部を樹脂で作ることで、外部からの熱を通しにくい断熱性能の良いサッシとして評価されてきました。
また、アルミ樹脂複合サッシの登場と前後して、窓ガラスもそれまでの単板(シングルガラス)から複層(ペアガラス)に変わっていき、より窓の断熱性能が強化されるようになってきました。

「樹脂サッシ」は、窓枠全体が樹脂で作られており、上記の二種類のサッシよりも断熱性能が高いことが特徴です。
しかし、樹脂はPVCというプラスチックの一種で、紫外線による劣化が起こりやすいことが問題視されていました。
この問題を解消するため、樹脂サッシの表面にアクリル被膜でコーティングすることで耐候性が向上する加工を施しています。
また、樹脂サッシはアルミと比べて剛性がないため、フレームを厚くする必要があり、サッシが重量化することや、たわみなどが発生するため、大開口のサッシを作ることが難しくなるというデメリットも存在します。

それぞれのサッシの特徴は以上となりますが、前述のように近年では「樹脂サッシ」が選ばれることが多くなっています。
その理由としては、住宅の断熱性能の重要性が広く認識されていることが挙げられます。
この流れを大きく後押ししているのが、SNSなどでの情報発信です。樹脂サッシを標準採用している住宅会社のお客様が「樹脂サッシは断熱性に優れ、耐久性も問題ない」と投稿することで、それが広まり、現在では高断熱住宅=樹脂サッシという認識が一般化しています。
近頃ではハウスメーカーやローコストビルダーにも採用されることが多くなり、樹脂サッシの普及率が急速に上昇しています。


しかし、樹脂サッシを採用すれば、それだけで窓の高断熱化がなされるかというと、そうでもありません。
現在のサッシは、前述のとおりガラスが単板(シングルガラス)ではなく、複層(ペアガラス)が一般的であり、高性能なものには三層(トリプルガラス)があります。
ペアガラスにするメリットは、ガラスの間に空気層を設けることで断熱性を向上させることができる点ですが、そのためにはガラスの四方にスペーサーという部材を取り付ける必要があります。

このスペーサーにも種類があり、一般的にはアルミスペーサーと樹脂スペーサーから選択します。
そのため、スペーサーの材質がアルミの場合には、樹脂サッシを選んだとしても窓ガラスに結露が発生することがあります。

そして、なぜか樹脂サッシの大手メーカーの一部は「アルミスペーサー」を標準としており、樹脂サッシを採用している住宅会社でもアルミスペーサーのまま提案してくる会社が存在します。
そのため、樹脂サッシを採用する際は、スペーサーが樹脂スペーサーになっているか確認する必要があります。
アルミスペーサーから樹脂スペーサーへの変更にはそれほどコストがかからないため、樹脂サッシの性能を最大限に活用し、結露を防ぐためにも確実に樹脂スペーサーを選択することをおすすめします。

ただし、防火サッシについては、アルミスペーサーしか選択肢がないため、準防火地域では、防火サッシを採用した窓には多少の結露が発生する可能性があります。
もちろん、延焼ラインから外れている窓や防火シャッター付きの窓は樹脂スペーサーを選択すべきですが、少なくない数の窓でアルミスペーサーが必要となるでしょう。
この場合、窓ガラスに多少の結露が発生することを覚悟しなければなりませんが、壁内結露を防ぐため、窓枠の隠れてしまう部分に対する防露対策を行う必要があります。

以上のことから分かるように、窓の断熱性能を引き出すには、サッシの素材選びだけでなく、スペーサーや窓枠周りの防露処理なども考慮することが必要です。
住宅会社を選ぶ際には、自身の大切な住まいを任せることになるため、断熱や結露などの知識を持った住宅会社を選ぶようにしましょう。