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2023/5/23 8:00

雨漏りしない屋根

家づくりにおいて、どの屋根材を選べばよいか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
屋根は雨漏りのリスクを最小限に抑えるための重要な要素であり、雨漏りを防ぐことができるかによって家の寿命や耐震性に大きな影響を及ぼします。
現在、住宅に採用される屋根材にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴やどの屋根材が雨漏りに強いのかを理解することは極めて重要です。

この記事では、代表的な屋根材であるスレート・瓦・ガルバリウム鋼板などについて、特徴を説明し、雨漏りに強い屋根材を紹介します。


まずは、スレートについて説明します。
スレートとは、セメントと繊維質を混ぜて薄い板状にしたものに、防水塗装を施した屋根材です。
コストが安くカラーバリエーションが豊富なため、現在、最も普及している屋根材といえます。
材料に含まれる繊維質は、セメントを割れにくくするための「つなぎ」の役目があります。

また、以前のスレートにはアスベストが含まれていました。これはセメント板の補強目的で使用されており、アスベスト含有品のスレートは割れにくく耐久性もありましたが、ご存じの通りアスベストの発がん性や危険性が指摘されるようになり、現在のスレート屋根には含まれていません。
アスベストが禁止された後のスレート屋根は、補強用の繊維質を見直さざるを得なくなり、当初は割れやすく脆いものもあったようですが、現在では、補強繊維も改良されてきているのか、耐久性も伸びてきています。

ただし、スレート屋根は人が踏むと割れる程度の強度しかなく、屋根の上に乗った際に割らないように歩くのが難しいほどです。
もともと、コストパフォーマンスの良い商品という位置づけのため、ほかの屋根材と比べたときに、耐久性の面では一歩劣ることは否めません。
また、スレート屋根は、スレート同士が密着しないように縁切りを行う必要があり、密着させてしまうと毛細管現象によって雨水の侵入を許してしまうことになります。
このような理由で、長期的な耐久性を考えると、あまりおすすめできる屋根材とはいえません。

なお、スレート屋根の施工方法は、瓦屋根と同じように屋根材を下から重ね合わせていくもので、屋根材の上を雨水が流れることで排水しますが、水を素早く排水するために屋根の勾配をある程度急にする必要があります。
ただし、台風などの強風が吹くと、雨水が屋根材の下に回ることを防ぐのは難しいため、屋根材の下に敷く二次防水層と呼ばれる防水紙によって雨漏りを防ぐことになります。
そのため、この二次防水層に使われる「ルーフィング」という防水紙の性能が十分でなければ、早期に劣化してしまい雨漏りが起こってしまいます。
一般的なルーフィングは耐用年数が10~20年程度しかないため、耐久性のある「改質アスファルトルーフィング」以上のものを採用するようにしましょう。


次に、瓦屋根について説明します。
瓦屋根は昔ながらの伝統的な屋根材で、その高い耐久性から現在の新築住宅でも人気のある屋根材です。
瓦は粘土に釉薬を塗って焼き上げるため、陶器瓦とも呼ばれ耐久性が極めて高く紫外線などの影響による劣化もしにくい素材です。
また、丈夫で割れにくい性質ですが、破損した場合でも、破損した瓦のみ交換することができて、修繕がしやすい点も魅力的です。
このように、耐久性という観点でいえば文句のつけどころのない瓦屋根ですが、皆さんにもよく知られているデメリットがいくつかあります。

1つ目が「重量がある」ことで、屋根に重量物が乗っていると建物全体の重心が高くなり、地震の際に揺れが大きくなります。
そのため、瓦屋根の住宅は、地震の際に大きな被害が発生したことから、屋根材としての採用を敬遠されるケースもあります。
しかし、瓦屋根の重さを含めて構造計算をすることで、十分に耐震性のある住宅にすることができるため、心配する必要はありません。
瓦屋根の住宅を希望される方は、構造計算ができる住宅会社に依頼することを忘れないようにしましょう。

デメリットの2つ目が「落下する」ことで、こちらもよく知られたデメリットだと思いますが、地震の際に地面に散乱した瓦を見て、危ないと思ったことのある方も多いのではないでしょうか。
しかし、現在の瓦屋根の施工方法では、瓦が落下することは少ないため、過度に心配する必要はないでしょう。
もし、不安に感じるようでしたら、施工業者にしっかりと説明を求めるようにしましょう。

デメリット3つ目は「雨漏りが起こる」ことで、瓦屋根は先ほど説明したスレート屋根と同様に、屋根材を下から積み重ねる形で施工されており、屋根材の上を雨水が流れます。
そのため、風によって雨水が屋根面を上がってくると、屋根の裏に水が回ってしまいます。
昔の瓦屋根には、下地に土を使う「土葺き」の瓦屋根があり、雨がしみ込んでも雨が止んだ後に乾燥するため、多少の雨漏りを許容していましたが、土葺きは通常の瓦屋根より重量があり、耐震性に難があったため現在では採用されることは滅多にありません。
では、現在はどのように雨漏りを防いでいるかというと、こちらもスレート屋根と同様にルーフィングによって二次防水層を形成し、瓦の裏に回った水を排水しています。
昔のルーフィングは性能が低いものが多く、防水機能が失われてしまうものもあったため、瓦屋根に雨漏りのイメージがあるのだと思います。

瓦屋根は前述のとおり、極めて高い耐久性を持っており、耐用年数でいえば50年以上となるため、ルーフィングも最高級の高耐久品を採用すれば、防水機能が50年以上続くことを期待できるかもしれません。
ただし、瓦屋根にはのし瓦などのメンテナンスが必要な箇所もあるため、メンテナンスフリーではないことを留意しておく必要があります。


最後に、ガルバリウム鋼板の屋根について説明します。
ガルバリウム鋼板は近年人気が高まっている屋根材で、外壁などに使用されることも増えてきています。
ガルバリウム鋼板とは、メッキ処理がされた鋼板のことで、亜鉛・アルミニウム・シリコンからなる合金によりメッキ被膜が組成され、そのうえに防水塗装が施されています。
また、ガルバリウム鋼板は厚みが0.3mm前後と薄く、軽量なため住宅の耐震性能にはプラスの要因となります。
さらに、加工が容易なため、屋根材として使用する際にもいくつかの葺き方を選ぶことができます。
代表的なものを挙げると、立平葺き・横葺き・瓦棒葺き・折板葺きなどがあります。

この中で特におすすめしたいのが、ガルバリウム鋼板の立平葺きです。
立平葺きは1枚の板金で水上から水下まで排水を行うため、雨漏りのリスクがほとんどありません。
また、立平葺きでは、ガルバリウム鋼板同士のジョイント部に、嵌合式と呼ばれる方法を採用しており、鋼板の端部の立ち上がりをはめ込むことで、雨水が屋根材の裏に回ることを防いでいます。
さらに、ガルバリウム鋼板立平葺きは雨漏りリスクが低いため、屋根勾配を緩くできるのも特徴です。これにより、外観デザインの幅が広がるうえ、外壁材の面積が少なくて済むため、コストを抑えることが可能となります。

他の葺き方にも、それぞれ特徴があります。
すっきりとしたデザインが好みであれば、ガルバリウム鋼板の横葺きが良いでしょう。
折板葺きは、工場などに採用されることが多く、一般住宅ではほとんどお目にかかりません。
瓦棒葺きは、瓦をひっかける際に使う木材である瓦棒を利用した施工方法で、立平葺きの嵌合部分に芯材として瓦棒を使う方法です。
なお、近年になってガルバリウム鋼板より耐久性の高い「SGL鋼板」も登場しており、予算に余裕があり、耐久性をより重視する方は採用するのがいいでしょう。

ガルバリウム鋼板の屋根材について調べていると、屋根材ごとの断熱性や防音性に言及している記事を見かけますが、断熱性能については屋根断熱か天井断熱によって決まるうえ、屋根面の通気工法を採用していれば屋根の下地に通気させるため、屋根材そのものの断熱性を気にする必要はありません。
また、防音性についても、屋根か天井に断熱材を施工し、気密性を上げるための気密施工がきちんとされていれば、屋根材によって音の聞こえ方が大きく変わることは少ないでしょう。
もちろん、防音性などに心配がある場合は、断熱材付きのガルバリウム鋼板もあるので、そういった商品を採用するのがいいでしょう。

ガルバリウム鋼板について、メリットばかりを記しましたが、デメリットについてもいくつか挙げていきたいと思います。
まずは、沿岸部や工場付近で採用した場合に、錆が発生する危険性があります。
また、雨がかりの少ない場合でも錆が発生する可能性があるため、定期的に散水して汚れを落とすか、雨がかりの少ない箇所ができないように、シンプルな屋根形状にしたほうがいいでしょう。
その他には、板金であるため、キズやへこみができやすく、ほかの金属が接触していると「もらい錆」で錆びてしまうことがあるため、注意が必要です。
このように、耐久性に優れた屋根材ではあるものの、メンテナンスフリーというわけではないため、定期的な点検をする必要があります。

ちなみに、ガルバリウム鋼板よりコストが高いものの耐久性に優れる屋根材として、ステンレスと銅板が挙げられます。
かなり高額になるため、住宅で一般的に使用されることは少ないですが、より耐久性を求める場合はこれらを検討してみてもいいかもしれません。


さて、代表的な屋根材について説明してきましたが、それぞれの屋根材の特徴をご理解いただけたでしょうか。

すべての屋根材に言えることですが、雨漏りのリスクは屋根材そのものだけでなく、屋根の棟(頂点)部分や軒先、壁との取り合い部分にも存在します。
これらの部分は水が侵入しやすく、そこから雨漏りが始まることがあります。そのため、これらの部分への防水施工や防水部材の適切な使用が必須となります。

また、住宅の劣化を防ぐには、雨漏り対策だけでなく結露を起こさないことも重要です。
とくに屋根面は、住宅の中で最も温度差の激しい部位なので結露対策として屋根通気工法は確実に採用すべきです。
しかし、屋根の通気工法は、外壁の通気工法と比べて普及しておらず、いまだに十分な通気が取られていない住宅を多く見かけます。
屋根材やルーフィングの耐久性だけで安心せず、依頼先の住宅会社がしっかりとした施工方法を行っているか確認をすることが大切です。
自分の家の長期的な安全性と耐久性を守るため、間違いのない選択をしたいものです。