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2023/5/24 9:00

太陽光パネルに適した屋根

近頃の電気代の高騰も相まって、太陽光発電の設置を検討している方が増えています。しかし、太陽光パネルの設置に際しては、家の構造や屋根の材質などを考慮する必要があります。
ここでは、太陽光パネルの設置に適した屋根の種類とその注意点、そして既存住宅への設置について詳しく解説します。

まず、太陽光パネルの設置に最も適した屋根材として推奨するのが、ガルバリウム鋼板の立平葺きです。
ガルバリウム鋼板とは、メッキ鋼板の一種で、亜鉛とアルミニウムとシリコンによるメッキを施したものを指します。
ちなみに、亜鉛メッキの鋼板のことを「トタン」といい、トタンの錆びやすさを改良して耐用年数を延ばしたものがガルバリウム鋼板です。
ガルバリウム鋼板は屋根材のなかでも人気の素材ですが、鋼板の加工がしやすいこともあって葺き方の種類がいくつかあります。
そのなかでも立平葺きは「キャッチ工法」を用いることで、つかみ金具を使って穴あけ施工をせずに太陽光パネルを固定することが可能です。
この工法は、屋根へのダメージを最小限に抑え、雨漏りのリスクを減らすのに役立ちます。

一方、ガルバリウム鋼板の横葺きについては注意が必要です。
キャッチ工法が採用可能ではありますが、太陽光パネルは強風に吹かれるとパネルが持ち上がるような浮力が発生することがあります。
横葺きの場合は、その浮力を支えるのが数枚の板金となるため、太陽光パネルとともに屋根材が飛ばされるリスクがあるとの指摘がされています。
そのため弊社では横葺きの場合に太陽光パネルを設置したことはありません。
ガルバリウム鋼板の横葺き屋根に太陽光パネルを設置する際は、施工業者の説明をよく理解し、慎重に検討すべきでしょう。

瓦屋根は昔ながらの屋根材であり、その耐久性から根強い人気がありますが、太陽光パネルの設置には少し注意が必要です。
太陽光パネルを設置する際に、パネルを固定できる支持瓦を使用することで、屋根への穴あけが不要になります。
しかし、支持瓦の設置のためには、屋根の下地にあたる二次防水層に穴をあけてビス止めする必要があり、この二次防水層の止水処理を間違いなく行う必要があります。
また、瓦屋根はもともと重いため、太陽光パネルの重量を追加で載せると、地震の際に揺れが大きくなってしまいます。
そのため、瓦屋根に太陽光パネルを設置する場合は、耐震性能に問題がないか確認するため、構造計算を必ず行うようにしましょう。

瓦屋根はコストが高いため、太陽光パネルの設置とともに耐震性の補強が必要な場合、費用負担を十分に考慮する必要があります。
高額な初期投資が必要になるため、長期的な利益とのバランスを確認してから設置を決定することが賢明です。

一方、スレート屋根に太陽光パネルを設置することはおすすめできません。
スレートは屋根材として最もポピュラーな素材で、セメントに繊維質を混ぜた厚さ5mm程度の薄い板に防水塗装が施されたものを指します。
この板を、瓦と同じように下から重ね合わせていくことで施工します。コストが安くデザインが豊富なことから広く普及しています。
しかし、このスレート屋根に太陽光パネルを設置する場合は、パネルを固定する金具をビスで止める必要があり、屋根材に穴をあけることになります。屋根にあいた穴は、止水シールを用いて防水を行います。
この屋根の穴は、太陽光パネルの下に隠れる部分になるので紫外線による劣化は抑えられますが、地震の影響や温度差による伸縮などにより、このシールが劣化すると雨漏りのリスクが増大します。

また、既存住宅への太陽光パネル設置も基本的にはおすすめできません。
現在の既存住宅の大半は、耐震性能を確かめるための構造計算がされておらず、太陽光パネルの重量を支えるだけの余力があるのか不明確だからです。
仮に、構造計算がされていたとしても、太陽光パネルを載せても問題がないほどの余力があるケースは少ないでしょう。
さらに、既存住宅に採用されている屋根材は、太陽光パネルを設置することを前提にしていないので、施工をするうえで問題になることがあるでしょう。

そのため、既存住宅に太陽光パネルを設置したい場合には、耐震工事や屋根の葺き替え工事などを同時に行う覚悟が必要です。
これらの措置は一見手間とコストがかかるかもしれませんが、太陽光パネルを載せたうえで住宅の安全性を確保するためには避けては通れません。

太陽光パネル設置には、しっかりとした計画と十分な知識が必要です。光熱費削減の効果を期待して安易に設置すると、あとから多大なコストが必要となってしまうこともあります。
しかし、適切な施工方法で十分に対策をとれば、光熱費の削減や非常時の電源の確保だけでなく、再生可能エネルギーの活用による地球環境への貢献などのメリットを得ることができます。