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2025/12/8 9:00

高断熱なのに光熱費が高い理由

省エネ住宅の「燃費性能」とは何か?断熱性能・設備・建築費から考える賢い家づくり完全ガイド

住宅を選ぶ際、多くの人が「間取り」「デザイン」「価格」に注目します。しかし、光熱費の値上がりが続く今、最重要視すべき項目こそ 住宅の燃費性能(エネルギー効率) です。
自動車では燃費を比較することが当たり前になりましたが、住宅にも同じ発想が求められる時代に突入しています。

本記事では、省エネ住宅の本質である「燃費性能」について、

断熱性能(UA値)の意味

高断熱でも光熱費が下がらない理由

設備とのバランスの重要性

エネルギー設計の最適化

建築費+光熱費の総コストという新基準

具体的にどんな家が“燃費の良い家”なのか

これらを総合的に解説し、後悔しない家づくりの判断基準を提供します。

・なぜ今「住宅の燃費性能」が重要なのか?
・光熱費の高騰が家計に直撃している

近年の電気料金・ガス料金の上昇により、住宅のエネルギー効率は家計を左右する大きな要素になっています。
たとえば、断熱性能が低い家は以下のような特徴を持ちます。

・冷暖房をしても室温が安定しない
・夏は暑く、冬は寒い
・光熱費が年間10〜20万円以上変わる
・冷暖房設備を増設しなければ快適にならない

これらのコストは、住宅ローンの返済と同じく「長期的に積み上がる負担」になります。


省エネ基準の義務化が進む流れ

日本では2025年から省エネ基準適合が義務化され、すでに性能の低い住宅は建てられなくなっています。
つまり、国全体で“住宅の燃費を良くする”方向に舵が切られています。

しかし、本当に快適で光熱費を抑えられる家をつくるには、
最低基準を満たすだけでは全く不十分です。


住宅の燃費は資産価値にもつながる

また、省エネ性の低い住宅は、今後リセールバリュー(資産価値)が下落すると予想されます。

エネルギーコストが高い

快適性が低い

断熱・設備のアップグレードに費用がかかる

買い手にとって魅力が小さいためです。

逆に、燃費性能の良い家は

光熱費が安い

夏も冬も快適

設備が長持ち

市場価値が落ちにくい

という強みがあります。


住宅燃費の土台となる「断熱性能(UA値)」を理解する

UA値(外皮平均熱貫流率)は、住宅の外壁・屋根・床・窓などから逃げる熱量を示す指標です。
数字が小さいほど断熱性能が高く、省エネになります。

UA値 省エネ性能の目安
0.87  現在の最低基準(低性能・断熱等級4)
0.60  現在の一般的性能(断熱等級5)
0.46  高性能住宅の一般的性能(断熱等級6)
0.26  最高等級の断熱性能(断熱等級7)

UA値は車でいうと「エンジン性能」に匹敵する基礎的な性能です。
まずは、住宅の燃費というとUA値を確認することから始まります。


しかし、UA値だけでは燃費は決まらない

家づくりではよく「うちはUA値0.4です!」というアピールがありますが、
UA値だけで燃費は判断できません。

高断熱なのに光熱費が高い家は珍しくありません。その理由は、

・窓性能(サッシ・ガラス)が低い
・気密性(C値)が悪い
・住宅形状が複雑で無駄が多い
・日射取得・遮蔽の設計が不十分
・設備効率が低い
・換気と空調の計画が適切でない

など、複数の要素が絡み合うためです。

これらの要素を車で例えると、
・エコタイヤの利用
・空気抵抗の少ないボディ形状
・車体の軽量化
などの工夫のように、エンジン性能だけをアピールしても、総合的な燃費性能が良いとは限らないことと似ています。


高断熱なのに光熱費が下がらない住宅の落とし穴

住宅から逃げる熱のうち、 窓が40〜50%を占めると言われています。

樹脂窓・トリプルガラスが普及してきましたが、
アルミ樹脂複合窓と比べると性能差は大きく、光熱費に直結します。

例:冬の熱損失比較

アルミ樹脂複合窓 → 熱が逃げやすい

樹脂窓Low-E複層 → 熱損失が約半分

トリプルガラス → さらに約30〜50%削減

「UA値は良いのに寒い家」の多くが、窓断熱に弱点を抱えています。


気密性(C値)が悪いと、高断熱でも意味がない

断熱材がどれだけ優れていても、すき間が多ければ熱は逃げてしまいます。
C値1.0と0.3では、エアコン効率は大きく違います。

気密性が悪い家は

・冷暖房が効きにくい
・24時間暖冷房のランニングコストが上昇
・壁体内結露のリスク増

という問題を抱えます。


設備性能と設計の不一致

高性能エアコンやハイブリッド給湯器を導入しても、

部屋の形状

家の大きさ

気密・断熱

日射取得の計画

などと整合していなければ、省エネ効果は発揮されません。


住宅燃費を最大化するために必要な「エネルギーデザイン」

住宅の燃費は、以下の6つの要素の総合設計で決まります。

断熱性能(UA値)

気密性能(C値)

窓性能と日射取得設計

日射遮蔽計画(夏対策)

空調・給湯・換気設備の効率

住宅形状・間取りの合理性

これらが最適化されることで初めて「燃費の良い家」になります。


建築費と光熱費の“総額”で考える住宅の燃費性能

性能を上げるには、

高性能断熱材

樹脂窓・トリプルガラス

高効率設備

気密施工精度

外皮設計の最適化

が必要で、当然ながら建築費は上がります。

しかし、性能を上げれば光熱費は確実に下がります。


最適解は「建築費+光熱費=総合燃費」で決まる

住宅は30〜40年使用するもの。
年間10万円の光熱費差は、30年で300万円以上の差になります。

つまり、重要なのは

初期費用だけでなく、長期的な支出を含めたトータルコストです。


「燃費の良い家」をつくるための実践ポイント

以下の要素を総合して検討することで、無駄のない省エネ住宅が実現します。

1. 断熱性能はUA値0.3~0.46がコスパ最適

等級6レベルは光熱費削減効果が高く、日本の多くの地域でバランスが良い水準です。

2. 窓は樹脂サッシ+複層ガラス以上を選ぶ

窓断熱は光熱費に直結するため、最優先で投資すべき項目です。

3. 気密性(C値)は1.0以下、できれば0.5以下

気密性能が高いほど、省エネ性・快適性が向上します。

4. パッシブデザインで「日射取得」と「日射遮蔽」を両立

冬は太陽熱を取り入れて暖房負荷を下げる

夏はしっかり遮蔽して冷房負荷を下げる

このバランスが燃費性能を左右します。

5. 設備は“性能 × 設計”で選ぶ

例:高効率エアコンでも、設置位置が悪いと性能を発揮できない。

6. ライフスタイルを反映したエネルギーデザイン

在宅時間が長い

共働き

子どもが多い

ペットがいる

二世帯住宅

などによって最適な性能は変わります。


まとめ:燃費を理解した家づくりが、未来の暮らしの質を決める

住宅の燃費性能を理解せずに家を建てることは、
「燃費性能を知らずに車を買う」ようなものです。

これから家づくりをする人が重視すべきは、

断熱性能(UA値)

気密性能(C値)

窓性能

パッシブデザイン

設備効率

建築費と光熱費の総合バランス

この6つの要素を総合して考えることです。

そして、最も重要なのは
“あなたの暮らしに最も合う性能バランスを選ぶこと”。

燃費性能を理解し、最適な家を選べば、

一年を通して快適

光熱費が安い

健康的に暮らせる

設備が長持ち

資産価値が下がりにくい

そんな家づくりが可能になります。