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2026/7/3 9:00

全館冷房が失敗するわけ1 ~冷気の搬送は難しい~

小屋裏エアコンをはじめとする全館冷房では、小屋裏など居室以外の場所に設置したエアコンから、LDKや寝室などに冷気を運ぶ必要があります。
そのため、冷房した空気をどのようにして家全体に配っていくのか、冷気をどのルートで循環させるのかを設計することが、全館冷房の最も重要なポイントになります。

今回は、「全館冷房が失敗するわけ」として、冷気の特性について説明していきます。
本記事では、前提条件となる断熱性能・気密性能の不足や、「リターン」を設けていないなどの初歩的な失敗ではなく、冷気はどのように動いて、どういう動きはしないのかという点を解説します。


冷気は下降して、暖気は上昇する

「冷たい空気は下降して暖かい空気は上昇する」ということを、どこかで聞いたことがあるかと思いますが、正確には「冷たい空気は密度が高く、重いため下へ沈む」そして「暖かい空気は密度が低く、軽いため上へ浮く」という性質を持っています。つまり、冷気は暖気よりも重く、動きにくい性質を持っているということです。
そのうえで、実際に冷気がどのように動くのかを可視化するには、ドライアイスを溶かしたときに発生する白い煙を見るのが分かりやすいです。


※ドライアイスを水に入れて溶かす

ドライアイスそのものは二酸化炭素なので、気化しても無色透明です。
そのため、この白い煙は周辺の水蒸気を冷やして発生した霧の一種で、冬に息を吐いて白くなるのと同じ原理です。
この白い煙は冷気と同じ動きをするため、動きを可視化するのに最適です。


※囲まれた空間では、冷気は滞留する

画像のように、冷気は周りを囲まれた状態では、その場に留まります。
分かりやすい例では、コンビニのアイス売り場で、フタがないのにアイスが溶けないのは、冷気のこの特性を生かしているからです。
このことからも、冷気は動きにくく、下に溜まるという特徴を持っていることが分かります。

具体的には、冷気はどのように動くものなのでしょうか?
冷気の動きとは、簡単に言えば「水の動きと同じ」と考えてください。
水を器にそそぐと、最初は横に広がり、さらに溜まると水位を上げていき、溢れると下へ落ちていきます。冷気もこれと同じ動きをするわけです。
冷気は重いので、段差を乗り越えてくれることはありませんし、周りよりも低い場所があれば確実にそこへ溜まります。
もちろん、冷気は気体なので水と全く同じ動きはしませんが、水に例えることで、重く動かしにくい冷気がどのように動くのかを理解しやすくなると思います。


冷気を搬送するのは難しい

さて、全館冷房を成立させるためには、小屋裏の冷気を各個室に送り込む必要がありますが、どのように冷気を運べばいいでしょうか?
これは、前回の記事でも解説したように、搬送方法は下記の二種類に分類できます。
開放式:下降気流を生かして各部屋に直接冷気を落とす
密閉式:ダクトやファンなどで送風して各部屋に冷気を運ぶ
他にもハイブリッド式などもありますが、どの方式でも「小屋裏にしっかりと冷気を溜めること」が必要です。

また、冷気を思い通りに動かしたいと考えても、なかなか想定通りに動いてくれるものではありません。
例えば、1階にある冷気で2階を冷やそうとした場合、サーキュレーターを2階に向けて送風しても冷気を上昇させるのは至難の業です。
冷気は周りの空気と撹拌されて、周囲の空気を少し冷やしただけで消えてしまい、送風された空気は、冷気としての温度差を保つことができません。
つまり、冷気を「冷たいまま」届けるためには、周囲の空気と撹拌してはならず、空間の下方に沈んでいる冷気をそのまま運ぶ必要があるのです。

そのため、冷気を遠くまで運ぼうと思って、扇風機やサーキュレーターのような開放的なファンで遠くへ吹き飛ばしても、周囲の空気と混ざってしまうだけで冷気は運べないのです。
サーキュレーターなどは、室内の空気を撹拌して室温を均一に近づける器具なので仕方ありません。
離れた場所へ冷気を搬送する場合には、ダクトにファンをつなげることで、冷気を掃除機で吸い込むように引っ張っていき、目的の場所まで運ぶ必要があります。
ただし、その場合には冷気がダクト内部を通るため、ダクトが結露しないようにしっかりと断熱する必要がある点には注意しましょう。

なお、前回の記事でも伝えたように、ダクトで冷気を運ぶなら「ダクト式のアメニティエアコン」を採用する方法をおすすめします。
小屋裏エアコンは、冷気を気流やファンで直接運ぶシンプルさに魅力があるので、小屋裏エアコンにおけるダクト搬送はあくまで補助的な役割として考えるべきでしょう。

いずれにしても、全館空調を行う場合には、冷気をどのように運んで各部屋を冷やすのかをよく検討する必要があります。
大きなプールの水をためるのに、小さな蛇口をいくらひねっても無理があるように、冷気を運ぶには十分な風量を確保する必要があるわけです。
どれくらいの大きさの開口(穴)から冷気を落とすのか、ダクトで搬送するならどの大きさのダクトが必要かを考えなければ全館冷房は失敗してしまいます。


まとめ

冷気という重く動かしにくいものを搬送するには、冷気の性質をよく理解する必要があります。
冷気を搬送するということは、大量の水を運ぶことと同じくらい難しいことで、基本的には上から下に降ろしていくことが最も自然な搬送方法となります。
そのうえで空気の循環ルートをうまく設計しなければ、全館冷房を成功させることはできません。
依頼先の会社がどのように全館冷房を成立させているか、しっかりと理解することで、家づくりに失敗する確率を減らすことができます。
全館冷房を採用して後悔しないためにも、事前に知識を学んだうえで家づくりに取り組んでください。
次回は、空気の循環ルートについて解説していきます。
全館冷房や小屋裏エアコンについて、より詳しい説明を聞きたい方は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。