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2026/7/24 9:00

全館冷房が失敗するわけ2 ~空気の循環を考える~

前回に引き続いて「全館冷房が失敗するわけ」として、空気の循環について解説していきます。

全館冷房では各部屋に冷気を運びますが、例えば「小屋裏エアコン」の場合、小屋裏にある冷気を各部屋に送ればそれで終わり、というわけではありません。
小屋裏から送った冷気と同じ量の空気を小屋裏へ戻さなければ、いつまでも小屋裏から冷気を送り続けることはできないからです。
このように、小屋裏へ戻る空気のことを一般的に「リターン」と呼びます。
同様に他の全館冷房でも、送った冷気と同じ量の空気をどのような経路で「リターン」させるかというのは、しっかりと考えなければならないポイントになります。
今回は、小屋裏エアコンの事例をもとに「リターン」などの空気の循環について考えていきます。


空気の循環ルートを設計する

小屋裏エアコンが効かなかったり、結露が発生してしまうなどの失敗の多くは、空気の循環ルートをうまく設計できていないことが原因です。
断熱性や気密性を高めて、十分な性能のエアコンを設置したにも関わらず、小屋裏エアコンが失敗してしまう場合には、まず空気の循環がうまくいっているかを確認する必要があります。

では、空気の循環ルートがどのような状態であれば、うまくいくのでしょうか?
それを理解するために、家の中を3つの空間にエリア分けして考えてみましょう。
・空調室:小屋裏空間のこと、エアコンで冷気を作り、各部屋に配るための空間
・被空調室:LDKや寝室など、小屋裏の冷気が送られてきて、涼しくなる空間
・非空調室:廊下や階段など、小屋裏の冷気が直接は届かない空間

この3つのエリアで、「空調室→被空調室→非空調室→空調室」というサイクルで空気の循環ルートがうまく設計されていることが小屋裏エアコンの成功条件です。
いわゆる「リターン」というのは、この「非空調室→空調室」の空気の戻りのことで、リターンだけがうまくいっていればいいのではなく、家全体の空気循環が淀みなく流れていることが大切です。

言葉での説明は分かりにくいと思うので、画像を作ってみました。


※空気循環の概念図(AIによる生成画像)

画像のように、小屋裏空間(空調室)からLDKや寝室(被空調室)に冷気が送られて、その後に階段(非空調室)へ押し出された空気が小屋裏空間(空調室)へ戻っていくという循環ができていると、小屋裏エアコンは成功しやすくなります。
前回の記事でも説明した通り、「空調室」の冷気は重いため自然と落ちていってくれますし、ある程度温くなった「非空調室」の空気は小屋裏へ上っていってくれます。
このように、温度差による上昇と下降がどのように作用するかをあらかじめ検討しておくことも、空気の循環ルートを設計するうえでは極めて重要な要素になります。

ちなみに、リビング階段の場合はLDKと階段がつながっていますので、その場合の空気の循環ルートは「空調室→被空調室(LDK+階段)→空調室」となります。すべての間取りに概念図の分類が当てはまるわけではない点には注意が必要です。
また、必ずしも階段から「リターン」を戻さないといけないわけでもありませんので、より効率的で無駄のないルートを選ぶようにしてください。
まずは、この概念図を理解したうえで、実際の間取りでどのように循環ルートの空気が流れていくかを考えていくのがいいでしょう。


小屋裏エアコンの向き不向きについて

「小屋裏エアコンを採用したい」と希望される場合でも、実は間取りによって向き不向きがあるというのが実情です。
例えば、吹き抜けのない間取りの場合は、小屋裏エアコンで2階の個室を全館冷房して、1階のLDKは別途エアコンを設置して個別空調にすることを検討したほうがいい場合もあります。
他にも、一室だけ離れている間取りでは、個室へのエアコン設置を提案することもあるでしょう。
あくまで小屋裏エアコンというのは、高気密高断熱住宅を快適に過ごすための「手段」なので、小屋裏エアコンを採用すること自体が「目的」にならないように気を付けましょう。

さらに、小屋裏エアコンを採用する場合は、ライフスタイルによってメリットが多い方、少ない方もいます。
小屋裏エアコンを採用するメリットが多いのは以下の方です。
・フルタイムのリモートワークの仕事に就いている
・日中に誰かが在宅している
・ペットを飼っている

逆に、小屋裏エアコンを採用するメリットが少ないのは以下の方です。
・日中は全員不在
・暑がりと寒がりが極端に分かれている
・プライバシーを大事にして、個室を締め切りたい
こういった観点からも、小屋裏エアコンや全館冷房を採用すべきか検討してみてください。


他の全館冷房の空気循環

これまでは、「小屋裏エアコン」を例に全館冷房の空気循環について説明してきましたが、小屋裏エアコン以外の全館冷房では、どのように空気循環を考える必要があるのでしょうか。
全館冷房の種類によっても変わりますが、ダクト式エアコンではダクトで冷気を届けつつエアコン本体への「リターン」が必要になるケースがあります。
さきほどの概念図でいえば、「エアコン本体→被空調室→非空調室→エアコン本体」となるため、本体の設置位置と循環経路によって、全館冷房として家全体を涼しくできるかが決まります。

また、開放式の小屋裏エアコンと同じように、冷気を自然に配る方式であるホールエアコン(2階の廊下や階段ホールに設置)や階間エアコン(1階と2階の間に設置)の場合も、エアコン本体へ「リターン」が戻っていくように空気循環を検討する必要があります。
逆に、大手ハウスメーカーなどで採用されている専用の全館空調システムでは、「冷気の送風」も「リターン」もダクト配管で行っており、空調メーカー側で設計してくれるものが多く、空気循環が失敗する可能性は低いですが、これらのシステムは高額なうえに、エアコンなども専用品を採用しているため、将来の交換時期に更新コストが高いことや交換できない場合があるため、あまりおすすめできません。


まとめ

今回は「小屋裏エアコン」の失敗要因としてもっとも多いであろう「空気の循環」について解説しました。
どういう空気循環になっていれば全館冷房が成功するかというイメージは理解してもらえたかと思いますが、この考え方を実際の間取りに落とし込むのが一番難しいところです。
依頼先の会社に空調設計の実績がない場合は、無理のある計画になってしまう可能性もありますし、ご自身の間取りやライフスタイルには向いていない可能性もあります。
全館冷房が目的化していないか、無理のある計画になっていないかをよく考えたうえで、しっかりと納得できる空調設計になっている場合のみ、全館冷房を採用してみてください。
次回は、各部屋にエアコンを設置する一般的な「個別冷房」と「全館冷房」を比較して、夏の快適性と湿度について解説していきます。
全館冷房や小屋裏エアコンについて、より詳しい説明を聞きたい方は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。