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2023/5/29 20:00

耐震性能が低下する原因1

新築住宅を建てる際に「耐震等級3」の住宅を選ぶことを必須だと考えている方も多いと思います。
しかし、新築時に構造計算を行った住宅であっても、経年により耐震性能は低下する可能性があることを認識しておくことが重要です。
この記事では、耐震性能が低下する原因と、長期的に耐震性能を維持するためのポイントについて解説します。

住宅の耐震性能を維持するためには、構造体の劣化を防ぐことが欠かせません。
構造体の劣化の原因となるのは、雨漏りや結露などによる水分の影響です。
木材の含水率を低く保つことが木造住宅の構造体を長く維持させるには重要です。

ちなみに、水分の影響で構造体が劣化するのは木造住宅に限りません。
RC造や鉄骨造であっても、鉄筋や鉄骨は水分によって錆が発生し、構造体の劣化を引き起こします。
ここでは、構造体を水分にさらさないために気を付けるべきポイントをお伝えします。


まず、構造体に水分を付着させないために重要なのは、壁内結露を起こさないことです。
結露とは、湿った空気が冷やされることで水滴になる現象です。
冷えた水やビールを入れたグラスの表面に水滴がつくのが一例で、温かい室温の中に冷えたグラスあることで温度差によって空気中の水蒸気が冷やされて水滴になるのです。
住宅では、窓ガラスに結露が発生するのを見たことがある方が多いと思います。
この結露の現象が壁の中で発生することを、壁内結露といいます。

壁内結露を起こさないためには、壁内に水蒸気が入りにくいよう防湿層を設けることが第一です。
一般的には、室内側にベーパーバリアというポリエチレンでできた防湿シートを施工するか、もともと湿気を通さないボード系断熱材を隙間なく入れる方法がとられます。
また、防湿層は室内から湿気を通さないためのものですが、床下や天井裏から湿気を含んだ空気が入ることがあるため、これらを防ぐための気流止めを行うことも重要です。
これらの施工が間違いなく行われているかを確認するためには、気密測定を行うのがいいでしょう。

また、壁内に水蒸気が入ってしまった場合に備えて、外壁側に通気層を設けておくことも重要です。
これによって、壁内に入った水蒸気が閉じ込められずに、通気層を通って外部へ排出することが可能となります。
ただし、現在の家づくりでは、構造体の外周を耐力壁が覆っていることが多く、この耐力壁の透湿抵抗値によっては、水蒸気を外部へ排出することが難しい場合があります。
このように、壁内結露が起こりやすい状態であるか否かを確認するには、定常結露計算を行うことをおすすめします。


次に、構造体を濡らさないために重要なのは、雨漏りをさせないことです。
雨漏りをさせないのは当然のことと考える方もいると思いますが、いまだに住宅の不具合の多くは雨漏りが占めています。

雨漏りの問題は、完成した住宅を見ても発見しにくいものです。
そのため、新築住宅を建てる際に、防水施工が間違いなく行われているかを確認することが重要になります。
また、住宅の屋根や外壁は、水が内部に入ってしまっても大丈夫なように二次防水層を備えています。
この二次防水層によって、経年劣化が起こっても雨漏りを防ぐことができます。

屋根の二次防水層には、ルーフィングという防水紙が使われています。
このルーフィングの標準品は耐用年数10~20年程度しかなく、長期にわたって防水性能を保持するものではありません。
そのため、改質アスファルトルーフィングという高耐久のものを採用することをおすすめします。

外壁の二次防水層には、透湿防水シートというものが使われています。
この透湿防水シートを使う理由としては、外壁側には通気層を設けるため、湿気は通す一方で、水は通さない機能が求められるためです。
透湿防水シートは、熱や紫外線、木材に使う防蟻剤の影響で劣化することがあるため、施工の際に注意をするとともに、対策品を採用することをおすすめします。

ちなみに、屋根のルーフィングの上に通気層を設ける際は、透湿ルーフィングを採用する必要がありますが、一般的に屋根通気工法は、ルーフィングより下で通気を取ることが多いです。

また、雨漏りを起こさない重要なポイントとして、外壁の貫通部の防水処理が挙げられます。
当たり前といえばそれまでですが、窓サッシ周りや換気ダクト、エアコン配管などの周りを防水処理がきちんと行われているか確認する必要があります。
これらの防水処理がきちんと行われていなかったとしても、屋根や外壁を施工してしまうと、貫通部の外側で防水がされてしまい、施工不良に気付くのが10年以上先になってしまうこともあります。
後から施工不良を指摘しても、対応してもらえるケースは少ないと思いますので、事前にどのように施工するのか確認のうえ、可能であれば現場でチェックするようにしましょう。

その他に、最も雨漏りの多いポイントとして挙げられるのが、軒先と棟(屋根の頂点)、下屋と外壁の取り合い、バルコニーやパラペットの笠木などになります。
これらは、屋根の端部や、異なる防水部分が重なる場所で、しっかりとした知識がなければ雨漏りを起こしやすい場所になります。

特に、軒先や棟部分は、水切れがしっかりとされていなければ、毛細管現象によって水を吸い上げてしまうケースがあり、下から水が昇ってくるという、知識がなければ理解しにくい漏水が起きる箇所です。
こういった部分には、専用の防水部材がありますので、適切に使用して雨漏りを防ぐようにしましょう。
下屋と外壁の取り合いや、バルコニーの笠木などについては、一般的に防水施工マニュアルが整備されていますので、依頼先の住宅会社に防水施工の知識があるのか確認しておくと安心です。

長くなりましたので、次回に続きます。